御曹司は不遇な彼女に本物の愛を注ぐ
「いやっ……!殴らないで。ごめんなさいごめんなさい!」

「……」


私は怯えるようにその場に座り込んでしまった。気持ち悪い傷を見た隼人さんは私にドン引きしているに決まっている。


きっと醜い私を見て殴るんだ。公孝がそうだったように。隼人さんがそんな人じゃないってわかっているのにどうしても信じられない私もいて。


「俺が脱がせたんだ。殴るわけないだろ。紫音、俺と目を合わせてくれ」

「は、隼人さ……んっ!?」


「ん。俺は紫音の傷ごと全てを愛したいんだ。紫音にとっては思い出したくもないほど辛い記憶かもしれない。けれど、俺にとっては消えない傷跡があったとしても、それが気にならないほどお前のことが好きなんだ」

「隼人、さ……」


今までこの傷を見てきた人でそんなことを言ってきた人はいない。むしろそれなりに話せる女の子でさえ、この傷を見ると次の日から距離を置いていた。それほど、この傷は私にとって嫌な思い出なんだ。


この傷さえなければ普通に友達が出来て、普通に恋だって出来たかもと思うこともあった。けれど、この傷があったからこそ神宮寺さんとこうして出会えたんだとしたら、私はこの傷を作った両親のことを許してしまいそうになる。
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