御曹司は不遇な彼女に本物の愛を注ぐ
「それにしてもここのプール、人が全然いませんね」


温室プールだから、ここなら風邪を引かなそうだ。小学生の時、プールの授業中に突然雨が降ってきて急激に身体が冷えたのか次の日に風邪を引いちゃったんだよね。


そのせいか夏でもプールに入るのは少しだけ苦手意識がある。けれど、好きな人とプールに来れるならトラウマだってほんの些細な悩みだ。


隼人さんとなら、どんな場所だって嬉しい。最上階のレストランで食事をしなくても、普通のファミレスだって私は満足だ。


隼人さんってファミレスとか行ったことあるのかな?注文の仕方とか知ってるんだろうか。たどたどしい隼人さんを想像したら口元がにやけてきた。


「俺たちしかいないからな」

「え?」


「今日のためにこのプールは貸し切りにしたんだ」

「えぇ!?ど、どうしてですか?」


「何故って、紫音はソレとか気になるだろ」

「……」


ソレと言って指差したのは私の背中。


「やっぱり気持ち悪いですよね……」

「俺は一言も気持ち悪いとは言ってないだろ。紫音が俺以外の誰かに見られるのが嫌だと思ったから貸し切りにしたんだ。余計なお世話だったか?」


「いえ。むしろそこまで気を遣わせていただき感謝してい……きゃっ!?」


こっちに近づいてきた隼人さんは私が着ていたパーカーをバッと脱がせた。
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