気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「……あ」

 とんでもない失言だったと気づいてハッとする。

 夫婦だと理解しているのに、本当の夫婦ではないという意識もあるから、こんな発言をしてしまったのだろう。

「ご、ごめん……」

「いや……なんというか、なにも気にしないんだなと」

「気にしたほうが……よかったんだよね?」

 これが第三者のいる場所でなくてよかったと心から安堵する。

 夫の過去の女性について言及する妻なんて、そう多くないはすだ。

「付き合った数が少ないとは言わない。でも、君が思うほど深い仲になった人はいない。まともな恋愛経験はほとんどないと言ってもいいな」

 たった今した質問の答えではない。

 今日のようなひと時を過ごすのが初めてだと言われるより、今の言葉のほうがよほど意外だ。

「てっきり、私……」

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