気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「あ、ああ、うん、そうだな。そうだよな。大丈夫、わかっているから」

「先に入ってきていいよ。私は後でも」

「いや、俺が後に入る。ゆっくりしておいで」

「じゃあ……先、行ってくるね」

 とにかく顔から火が出そうで、今すぐ彼の前から逃げ出したかった。

 慌ただしくバスルームへ駆け込む最中、背後から押し殺したものをすべて吐き出すような溜息が聞こえた。



 志信さんは私がシャワーを浴び終えて部屋にやって来ると、入れ替わりにバスルームへ向かった。

 お互いに目を合わせられなかったのは間違いなく先ほどのキスのせいだ。

 胸の奥がじんじん疼いて熱い。冷水を思いきり顔に浴びたのに、まだ火照っている。

 これから、彼とどう接すればいいのだろう。

 キスの前と後で、こんなにも気持ちが変わるなんて知らなかった。

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