気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 いそいそと寝室へ逃げ込んで、ふたつあるベッドのうちの窓側のベッドに潜り込む。

 志信さんが眠るベッドには背を向けて、シーツの中で丸くなった。

 彼の自宅には寝室が用意されているけれど、あそこで夜を共にしたことは一度もない。

 私たちはいつも自室のベッドで眠り、互いの寝顔を知らない夫婦として過ごしてきた。

 今日もホテルに泊まると聞いて少し動揺したけれど、ツインベッドなら大丈夫。

……少し前まではそう思っていたのに。

 同じ部屋で、彼の寝息を感じながら眠りにつくなんてできそうにない。

 安眠の邪魔をしようと激しく高鳴っている鼓動を落ち着かせたくて、何度も深呼吸を繰り返す。

 ますます志信さんを意識するばかりで、ざわつく心は乱れるばかりだった。

「優陽? もう寝たか?」

 不意にそんな声が聞こえて息をのむ。

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