初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「帰ろうか」
「うん」

駐車場に止めていた車の助手席のドアを開けた。
助手席に座ってシートベルトを締めたあと、琴葉は静かに話し出した。

「伊藤さんの気持ちに応えることは出来ないって言ったの。そしたら、悩ませてごめんて。私のいい同僚でいたいから告白は忘れてほしいって……」
「そうか」

視線を下に向けた琴葉は、きっと申し訳ないとか思っているんだろう。
他人の気持ちを思いやれる優しい心の持ち主だけど、琴葉にそんな浮かない顔は似合わない。

「伊藤はいい男だな、俺の次に」

わざと明るく言えば、琴葉はフフと笑う。
その顔が可愛かったので彼女の唇に触れるだけのキスをして、話題をガラリと変えた。

「腹減ったな。何か食べに行くか」
「うん」
「和洋中、何系が食べたい?今日は琴葉が選んで」

俺が聞けば、琴葉は悩み始めた。

「えー、難しいな。うーん、じゃあ中華は?」
「いいよ。美味しいものたくさん食べよう」
「ありがとう、恭二くん」

嬉しそうに笑う琴葉の顔を見るだけで愛しさがこみ上げる。
そして、その笑顔は自分だけに向けてほしいという強い独占欲に駆られた。
彼女と付き合うようになり、いろんな感情に振り回されている。
てもそれは、俺にとって琴葉が唯一無二の存在ということに他ならない。

スマホを取り出して馴染みの中華料理の店に電話をかけて予約を取り付けた。
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