エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
溺愛プロポーズ
朝礼が終わると、頼まれていた会議資料の作成を始めた。
いつものように文章は分かりやすく簡潔に、表やグラフを用いて資料を作っていく。
特に今回は、第一と第二営業の合同会議の資料なので少し文字を大きくしたりと第一営業寄りで作成しているところだ。
前回、第一営業部長が『もう少し文字を大きくしてくれると助かる』と言っていたのを思い出したからだ。
内輪の会議だし、このことは久住部長にも確認済み。
営業担当者が書いた文章をもとにアレンジしていたら、隣から謝罪の言葉が聞こえて思わず手を止めた。
「す、すみません。少々お待ちください」
隣で怯えたような声で電話対応しているのは、星野真由美。
真由ちゃんは入社二年目の後輩だ。
肩までの髪の毛を緩く巻いていて、少し垂れ目で可愛らしい雰囲気の女性。
でも、仕事は丁寧でしっかりしている。
彼女のいつもと違う様子に、どうしたんだろうと思っていたら声をかけられた。
「琴葉さん、ちょっといいですか?ノズカさんから電話なんですけど、カタログがまだかってお怒りなんです」
「ノズカって確か春川くんが担当だよね」
春川明、私や望の同期だ。
「はい。それで春川さんに新作のカタログを持ってきてもらうように頼んでいたらしいんですけど、まだ持ってこないって」
「今、春川くんは……いないね」
春川くんの席に視線を向け、不在を確認した。