初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
ロビーに戻ると、スーツやワンピース姿の男女数人のグループが話している姿が視界に入る。
その中に見たことのある人を見つけた。
私の方に背を向けているけど、あの後ろ姿は恭二くんだ。
あれ、あの背の高い女性ってもしかして……。
「莉子、久住くんと元サヤの可能性はないの?」
「えー、恭二次第かな。私は構わないんだけどね。どう?」
元カノ、麻生さんが笑いながら恭二くんの肩に手を置いた。
それを見た瞬間、胸にどす黒い感情が渦巻く。
嫌だ。
触らないでーーー。
そう思った時には、私の足は恭二くんに向かって歩きだしていた。
「どうもこうも、俺には可愛い彼女がいるから冗談でもそんなことを言うな」
「恭二くんっ」
恭二くんが麻生さんの手を払うのと、私の声が重なった。
名前を呼ばれた恭二くんが振り向くと、私と目が合い微笑んだ。
そして、一人グループの中から抜け出して私のそばにやってきた。
「琴葉、もう来てたんだね」
「あの……」
勢いで名前を呼んだのはいいけど、何を言っていいのか分からず言葉に詰まった。
そんな私を恭二くんは甘やかに見つめてくる。
「いつも可愛いけど、今日のメイクは少し大人っぽくて綺麗だね。ドレスもよく似合ってる。やっぱり琴葉は淡い色がいいね」
コートの前を開けていたので着ていた水色のドレスが見えていて、恭二くんは照れることなく褒め言葉を口にした。