初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「話し中に邪魔してごめんね。私、ソファに座って待ってるよ」
「邪魔じゃないよ。もう話も終わったし。さあ、行こうか」
そう言って私の手を取って歩き出す。
「おい、恭二。その子誰だよ」
男女のグループの中の一人が聞いてくる。
恭二くんはめんどくさそうに立ち止まって「俺の婚約者」と言い放った。
「マジかよ」
「えー、恭二に婚約者?」
「年下っぽいよね」
口々に話し出す。
「じゃあ莉子は?久住くんと元サヤ考えてたんじゃなかったの?」
「元サヤなんて考えてるわけないじゃない。みんなが盛り上がるならってだけで話を合わせただけよ。それに、もう結婚とかコリゴリだから私は独身生活を謳歌するの」
友人に聞かれた麻生さんはキッパリと否定すると、私たちの方に向かって歩いてくる。
え、どうして?
不思議に思っていたら、私に向かって謝罪の言葉を口にした。
「琴葉ちゃん、さっきはごめんなさいね。私が余計なことを言ってしまったばかりに気分を悪くしたでしょ」
「いえ……」
「恭二からも聞いていると思うけど、私たちが付き合ったのは偽装だからね。私は幼い頃から恭二のことを知ってるけど、いつも冷めてて愛想なしだったのよ。だから一ミリたりとも恋愛感情は抱かなかったわ。それは恭二も同じだから安心してね」
恭二くんが愛想なし?
それは考えられないけど、私限定で甘い笑顔を見せてくれているんだと思ったら嬉しくなった。