初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
でも、断られてもすぐに次の相手にいける彼女のメンタルは相当強いんだろう。
それを違う方に向けたらいいのに、なんてお節介ながら思ってしまった。

「じゃあ、帰ろうか」
「はい」
 
ホテルを出てタクシーに乗り込んだ。

運転手に行き先を聞かれて答えたのは久住部長。
彼が告げたのは自分のマンションの住所だった。
 
「あの、」
「この前の夜のこと、ちゃんと話がしたい。羽山さんと話す機会を伺っていたけど、さすがに仕事中はそんな話を切り出せなくて。君の連絡先も知らないし。ちょうど芹から記念パーティーの話を聞いていたから、今日がチャンスだと思ったんだ」

真剣な表情で言われ、ドキッとした。
久住部長は仕事中にプライベートな話を持ち込むような人ではない。
それに、私の連絡先を知りたければ芹くんに聞けばすぐに分かると思う。
だけど、そういうことをやらないのは、久住部長の誠実さをよく現していた。

あの夜のことは、このままスルー出来るかと思っていたけど、どうやら無理そうだ。
私は「分かりました」と覚悟を決めた。

たどり着いた先はタワーマンションの最上階。
一歩足を踏み入れると、エントランスには大理石が敷き詰められ、受付にはコンシェルジュが立っていた。
『おかえりなさいませ』と四十代ぐらいの男性が頭を下げて挨拶した。
エレベーターが目的の階につき、扉が開いて見えたのはひとつの玄関のみ。
久住部長はセンサーにカードをかざして開錠した。
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