拾った相手は冷徹非道と呼ばれている暴君でした
ふかふかのソファへ腰掛けながら、エレナは紅茶を一口飲む。自分の家で飲む紅茶とは全く違う、上品な味がした。
もうアルと自分は違う世界に住んでいるのだと突きつけられたようで、エレナの気が沈んだ。
「まさかアルが皇帝陛下だと思わなくてびっくりしちゃった。凄いわ、頑張ってるのね!」
沈む気持ちを誤魔化すように、エレナは無理やり明るいトーンで口を開く。
「気軽に会えなくなるのは少し残念だけど……離れていても私はずっとアルの味方よ!」
「何言ってるんだ?今日からエレナもここに住むんだよ」
「え、ええ?なんで私が?」
「それはエレナが聖女だからだ」
「せ、聖女?」
初めて聞く呼び名にエレナはなんの事か分からず首を傾けた。
「エレナが前に栄養ドリンクって言って作ってた飲料があるだろ。あれから微かにだが聖魔法が感じられた」
「聖魔法……?」
「はぁ、やっぱり無意識だったのか。よく今まで無事だったな。アメリアを護衛に付けておいて正解だった」
「護衛ってまさか」
アーノルドが居なくなった後、入れ替わるようにしてアメリアはエレナの元へやって来た。それはつまり。
「ようやく気付いたのか」
アーノルドが揶揄うように、にやりと笑う。まるでアーノルドの手のひらで転がされているような感覚に、エレナは悔しくて唇を尖らせながら顔を背ける。
そんなエレナの顔を片手で掴んだアーノルドは、楽し気に頬をふにふにと押した。
「それで、聖女?だから私が必要ってこと?いつまで居ればいいの?」
「聖女かどうかが重要なんじゃない。エレナだから呼んだんだ。聖女ってのは、まあ建前だな」
「建前?」
「そうだ。何かしら建前がないとお前を側に置いとけないだろ」
「きゃっ」
グイッと、アーノルドはエレナの身体を持ち上げて自分の膝へと乗せる。
近すぎる距離にエレナが身を捩って離れようとするけど、そんなことは許さないとばかりにアーノルドは抱き抱える腕に力を込めながら言った。
「最初に拾ったのはお前なんだ。なら、最後まで責任を取らなきゃだろ?」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
短編でした!楽しんで頂けたら幸いですㅠ ̫ㅠ♡
《 女避けの為に選ばれた偽の恋人なはずなのに、なぜか公爵様に溺愛されています 》
https://www.berrys-cafe.jp/book/n1724316
完結したての長編です!
こちらも合わせてぜひよろしくお願いします₍ᐢ‥ᐢ₎
