冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 勉強机に突っ伏せていた香蓮は肩を揺すられた振動で、ぼんやりと意識を戻す。

 彼女の顔を覗き込んでいたのは、都内随一の進学校に通う十七歳の玲志だ。

 『れ、玲志くん。来てたんだ』

 香蓮は乱れた前髪を整えながら目を泳がせる。

 そんな彼女の頭を、玲志は昔と変わらずぽんっとひと撫でした。

 『今来た。昨日も遅くまで勉強してたんだろ? お疲れさま』

 『あ、ありがとう……』

 成長したふたりは、もう家族同然に過ごしてはいない。

 玲志は小学校を卒業後、父親が選んだ私立中学に進学し、香蓮もまた別の女子校に進学したからだ。

 とはいえ全く交流がなくなったかというとそうではなく、

 家族同士で食事をする際や、会社のイベントで顔を合わせていたし、ふたりは毎年必ず互いの誕生日にプレゼントを渡していた。

 さらに香蓮が高校受験の年になると、部活が多忙で勉強に追いついていない香蓮を心配し、玲志が勉強を教えてくれることになった。

 『ごめん、香蓮。少し待っててくれるか?』
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