冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い


 香蓮の初恋の相手……日向(ひゅうが)玲志とはかれこれ十年ほど会っていない。

 香蓮が物心つくころから、彼は彼女のそばにいた。

◆ ◆ ◆

 
 『れいしくーん! いっしょによつばのクローバーさがそー!』

 『またー? どうせみつからないよ、かれん』

 玲志の父親は『ASUMA』の元社員であり取締役COOだった。

 達夫、そして会社を支えていたが、活躍最中に妻が亡くなり、途中からシングルファザーとして男手ひとつで玲志を育てていた。

 飛鳥馬家と日向家はプライベートでも親交があり、多忙な玲志の父に変わって、香蓮の実母が香蓮と玲志の世話をしていたのだ。

 『……あった。かれん、あったよー!』

 『ありがとう。れいしくん』

 家族同然に寝食をともにし、学校も一緒。

 時々家の近所の公園で、シロツメクサを摘みに出かけたりした。

玲志は香蓮のためにシロツメクサの群衆から四葉のクローバーを一生懸命探し、彼女が喜ぶ姿を見て微笑んでいるような、優しい男の子。

 香蓮はごく自然に、玲志に恋をした。

 『かれん、れいしくんとずっといっしょにいたい。いなくならないでね』

 右手に四葉のクローバーを持った香蓮は、左手を繋いだ彼を笑顔で見上げる。

 『あたりまえだよ。こんなにだいすきなのに』

 『ふふ』

 幼いころはそんな戯言も平気で言えたが、成長を追うごとにふたりの関係性は変わっていった。

 『香蓮。起きて』
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