冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
木枯らしが吹き荒れる秋の日。
文京区にある葉山式場の一角にあるシロツメクサの群集が、無力になびいていた。
雑草さながらの扱いを受ける花だが、何度人に踏まれても息絶えることなく、その気高い白を残したままそこにあり続けている。
目の前にあるチャペルから高らかな祝福の鐘の音が響き渡り、さらにシロツメクサを揺らした。
今日この時、永遠の愛を誓った彼女たちは、果たして一生涯を添い遂げることができるだろうか。
あの頃と同じように、深い愛で心を通い合わせることはできるのか――。
音が止み元通りの形に戻ったシロツメクサだったが、やってきた参列者たちに容赦なく踏みつけられた。
「では、誓いのキスを」
チャペルに響いた神父の声に、肩を震わせた香蓮は呼吸を止める。
薄いベールの向こうにいる彼が一歩こちらへと近づき手を伸ばすが、とっさに後ずさってしまった。
(あ……私ったら、つい……)
目の前にいる夫に恥をかかせてはならない。
妻としての義務を果たさなければならないというのに、なんてことを。
焦る香蓮のベールをそっと捲りあげた玲志は、にこやかな笑みで彼女を迎える。
「香蓮、落ち着いて」