冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
翌日のうちに、香蓮は仕事から帰ってきた玲志から、個人秘書代理として出勤してほしいと頼まれた。
玲志直々の頼みは、香蓮にとってご褒美のようなもの。すぐにいくつか習い事をやめ、玲志の仕事を手伝えるように万全の準備を整えていった。
その一週間後の月曜日。
さっそく夫婦そろって、品川区に本社を構える“SKM コーポレーション”に出勤する。
高層ビルが立ち並んでいる中でも、ひときわ存在感を放つ都会的なビルを見て、香蓮は夫が指揮を執っている会社の力を思い知った。
社長室に到着して早々、玲志が使っているデスクの近くにある個人秘書用のデスクに案内された香蓮は、“立花”という年配の女性を紹介される。
彼女はSKMに長年秘書として席を置いていて、彼女の出勤体制は半分は出社、半分はリモートらしく、子育てと仕事を両立しているようだった。
一通り説明を終えた玲志は、まっすぐ香蓮を見た。
「今日と明日、彼女に基本的な業務を教わって、明後日からひとりで実践する気持ちでいてくれ。ふたりのときに困ったことがあれば、都度俺に聞くように」
「はい、れい……社長」
立花のいる前で名前で呼びかけた香蓮は、急いで口を慎む。
玲志はそれに反応を示すこともなく、表情を変えないまま立花に視線を移した。
「じゃ、後は頼む」
「かしこまりました。社長」