叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~


新堂さんとはろくに話せないまま、午後を迎えてしまった。というより、どんな顔をしていいかわからず、避けていたと言った方が正しいかもしれない。

こんなにも意識しているのはきっと私だけなんだろうな。現に、さっきお客さんと打ち合わせをしていた姿は、普段の新堂さんだったから。

「おーい、お土産買ってきたぞー」

パソコンの画面をぼんやりと眺めながらため息を零していると、入り口から威勢のいい声が聞こえてきた。見れば出張から戻った社長が、入口のところで紙袋を掲げて立っていた。

「社長。おかえりなさい」
「おう、ただいま。ちょっと休憩しないか?」

社長は先週から東北へ出張に行っていた。出張の時は必ずみんなにお土産を買ってきてくれるのだ。

「あ、じゃあ私お茶淹れますね」
「お、ありがとうね。乙葉ちゃん」

席を立つと給湯室へと向かう。その傍らでは社長や清家さんたちが、マグネットスペースに集まっていた。

この事務所は社長が設計デザインした近代的なオフィスになっている。大きな窓からは四六時中太陽の光が差し込み、木の温かさを感じられる、社長らしいデザイン。デスクはハチの巣状に配置され、いつでも誰にでも相談できるように工夫されていて、給湯室やパントリールームも完備された、お洒落なオフィスだ。

「どうでした? 商談は」
「うまくいったよ」
「お、さすが社長!」

仲野くんの明るい声が聞こえる。楽しげに談笑する声を背中で聞きながら、私は各々好みの飲み物を淹れ始めた。

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