叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
桜祭りに行ったときみたいに、新堂さんのプライベートの顔が見られると思うと今から胸が弾む。子どもみたいに笑ったり、年上らしくリードしてくれたり。仕事の時とは違う一面を見て、ますます彼を好きになった。
「乙葉がそんなにも夢中になる人ってどんな人なんだろう。私も見てみたいな~」
里穂が興味津々とばかりに口を弾ませる。
「写真とかないの?」
「残念ながらない」
「なんだぁ、つまらん」
「あ、ねぇ里穂。今日のお礼に、ごはんご馳走するよ。何食べたい?」
「いいの? やったー! そうだな~」
そんな話をしながら横断歩道で信号待ちをしていると、目の前の遊歩道を見覚えのある人が通るのが目に入った。
あれは……。
「イタリアンもいいけど、焼き鳥に生ビールっていうのも捨てがたいし……」
食べたいものを羅列する里穂の隣で、一人血の気が引いていく。だって目の前を綺麗な女性と楽しそうに歩くのは、新堂さんだったから。
「乙葉は何がいい? って、おーい、どうしちゃったの? 乙葉?」
青ざめる私に気が付いた里穂が、肩を揺さぶる。だけど私は二人から目が離せず、その場から動けずにいた。