叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~



「帰らないでください」
「倉田。お前、酔ってるだろ」
「もう酔ってません」

証明するかのようにはっきりした口調で答える。彼が困っているのは分かっていた。だけど触れたい。彼に抱かれたい。女の本能がそう叫んでいる。

今まで告白もできなかった私が何言ってるんだって自分でも思う。でもなぜか止まらなかった。これまで抑えてきた気持ちがきっと溢れ出たんだ。

それと理由はもう一つ。つい二日前、彼が給湯室で清家さんに「好きな人はいる」というのを聞いてしまったから。

もし新堂さんがその人とうまくいったら、きっと私にはもうチャンスがない。その気持ちが私を急かしていた。

「自分で何言ってるかわかってるのか? 状況を考えろ」
「わ、わかってます」

真後ろにはラブホテル。夜も更け人通りも少ない。間違いを犯すには十分すぎる。

「あの、ダメ……ですか?」
「俺も男なんだけど。そんな風に見つめられたら揺らぐ」
「新堂さんになら、いいです」

新堂さんは困ったように頭を掻いていた。私じゃそういう対象にならない? お子様なんて相手にできるかって、笑ってる?

「来い」


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