叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
「倉田、お前何やってんだよ」
「ひっ!」
お、怒ってる!
「あの、すみませんでした! 新堂さんみたいに上手に接待できなくて……」
あぁ、どうしよう。新堂さんの大事なお客様だったのに、気を悪くさせたかもしれない。本当に取引を辞めるなんて言われたら……。
「本当にすみませんでした」と身震いしながら必死に新堂さんに謝る。だけど次の瞬間、ポンと優しく頭に手を乗せられた。
「バカ。そうじゃない」
「え?」
「無防備に男と二人になるな。俺が来なかったらお前連れ込まれてたぞ」
え……? そういうこと?
「少しは危機感を持て」
「は、はい」
もしかして、女性として心配してくれてる? そのことに気が付くと、途端にドキドキし始める。
しかも憧れの新堂さんと二人きり。初めて触れた新堂さんの温もりが今も離れなくて、思い出して再び体が火照り始める。厚い胸板に逞しい腕。こんな状況なのにも関わらず、もっと触れてみたいと思う自分がいる。
「帰るぞ。お前の家どっちだ。送っていく」
「……ください」
「え? なんだって?」
彼の袖を引っ張ると、憮然とする新堂さんを上目遣いでみつめ言った。