【完結】転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
「ユリシーズ……! わかるか!? 俺の声が聞こえるか!?」
「…………ア…………レ、ク……?」
「そうだ、俺だ……! 良かった……お前、ずっと気失ってて……呼んでも全然起きなくて……俺、ほんとに…………どうしよう、かと……思っ……」
――駄目だ。
これ以上言ったら……多分、俺は泣いてしまう。
「……ッ」
でも涙なんて死んでも見せたくなくて、俺は奥歯を噛みしめた。
だがそんな俺の感情など見透かしているのだろう。
ユリシーズは困ったように唇を歪ませて、逆に俺に謝るのだ。
「……アレク、ごめん。……これは僕のミスなんだ。君の言葉に動揺して……魔法を使うのが……少し……遅れた」
「――ッ! 何言ってんだ! そもそも俺が油断していなければ良かっただけの話だろ?! お前が謝ることなんて、ただの一つもねぇんだよッ!」
「……うん、……だね。君ならそう言うと思ったよ。でも――心配ない。これでもちゃんと、致命傷は避けたんだ。だからそんな、世界の終わりみたいな顔、しないでよ。このくらいじゃ、僕……死なないから」
「……っ」
それはいつものユリシーズの微笑みで……俺は、どうしてかはわからないけれど、胸がとても苦しくなった。
「……ほんとに、大丈夫なんだな?」
「うん。凄く痛いけど、問題ない。……アレクは? 怪我はない?」
「……ねぇよ。お前が守ってくれたから……ほんと、無傷」
「ははっ。流石にそれは嘘ってわかるよ。……でも、大きな怪我はなさそうで、安心した」
「…………ああ」
――この後、俺は瓦礫の向こう側のグレンと今後の方針を話し合った。
その結果、俺はユリシーズを連れて戦線離脱すること、他の三人はこのまま瘴気の浄化を続行することが決まった。
また俺はグレンから、瘴気の浄化を終え次第、瓦礫の撤去に取り掛かれるよう、マリアに伝えろとの指示を受けた。
最後に、グレンは俺に忠告する。
「アレク、よく聞け。さっきの揺れのせいか瘴気が一段と濃くなっている。亀裂から入り込んだのだろう、魔物の気配も増えた。おそらくそちら側にもでかいのが何体かいる。警戒を怠るな。手に負えないと感じたら迷わず逃げろ。命を守るのが最優先だ」
「……っ、――ああ」
――こうして俺はユリシーズを背負い、無事だったランプを腰に吊り下げて、出口へと引き返した。