「光れ、夢を追え」

部活が終わって、私は図書室へと向かうと、蘭ちゃんに声をかけた。

蘭ちゃんは、顔を上げると「美里さん」と微笑んで、読んでいた数学の参考書を閉じる。

絆ちゃんから聞いた噂を、蘭ちゃんに伝えようかどうか悩んでいると、蘭ちゃんは私の名前を呼んだ。

「……美里さんは、私が自殺志願者だっていう噂、知ってる？」

蘭ちゃんの口から、私が今話そうとしていた、タイムリーな話題が出てきて、私は驚く。

「……その噂、今日友だちから聞いたよ」

「そっか……その噂の存在自体は、知ってた。でも、私が自殺志願者であることは嘘だからね」

困ったように笑って、蘭ちゃんは噂について否定する。その後、蘭ちゃんは視線を泳がして、何かを決意したかのような目を私に向けた。

「……あのね、美里さん。ちょっと、聞いて欲しいことがあってさ」

そう言って蘭ちゃんが語り出したのは、蘭ちゃんの将来の夢の話だった。

蘭ちゃんは、小さい頃から研究者になりたかったそうだ。でも、その夢を親に否定されて、医者になるように言われているんだって。

「……私っ、今でも、研究者になりたいの。医者になんて、なりたくない……私の夢は、叶わない。自殺を考えているわけじゃないけど、たまに消えたくなるんだ」