晩餐



「命がなくても
お互いの手を離さないと誓いますか」




数秒の空白のあとに放たれた言葉に、理由もなく瞼がジンとした。


命なんてなくたって


きっとこの優しい人は、私の手を握り続けてくれる。


今この瞬間だって。


それなら…私も──





「誓います」





オレンジの空を揺らすような鐘の音が

あまねく鳴り響いた。



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