晩餐
上機嫌な羽生先輩が私の手を優しく包みながら隣を歩いている。
教会をあとにした私たちはひたすら終わりのない地平線への道を進んでいた。
「楽しそうですね、先輩」
「ふふ、既成事実を作れたからね」
「なに言ってるんです?」
目尻をふにゃりと柔らかく緩ませている横顔を覗き見ながら私は首を傾げた。
後れ毛を揺らすほどの風が吹く。
穏やかだ。
叶うことならずっとこうして安寧に包まれていたい。
そう願うけど、生前の頃から私という人間は、自分の望みとは反対の方向へ運命が走っていくような人生を送ってきた。
あまり期待しないのが身のためであろう。