乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
ホレタオンナ。音がした、底が抜けて落ちたみたいな。丸い穴が空いて向こう側が透けて見えた。ような。

顔を上げた。暗褐色の眸はあたしから1ミリも逸れなかった。

同じくらい大事な仁兄にそう言われた時とは、まるで違った。

細胞ひとつひとつに染み渡ってくる。水みたいに光みたいに。

とっておきの親友で、“家族”で、命を預けられる特別な存在。

代わりなんかいなくて、なくなったら生きてける気がしない。

あたしはあたしの勝手で、自分の人生に親友を道連れにした。

榊がぜんぶ受け止めてくれるから、絆のうえに胡坐をかいた。

「・・・・・・あたしのワガママで縛り付けてごめん、・・・て思ってた」

あっという間に視界が滲んでぼやけた。情けなく歪んだ顔を榊の胸にまた押し付けた。

「ずっと甘えっぱなしで頼りっきりで、・・・命まで張らせて、これ以上もらえないじゃない・・・」

「どう思ってようと俺は足りねぇよ。100分の1もくれてやってねぇぞ」

「ばか・・・。あんたの計算ぜったい間違ってるから」

「・・・お前こそ勘違いすんな、俺は誰にも縛られてねぇ。テメェの意地でしがみついてきただけだ」

鼻をすすりながら。あたしは噛みしめてる。自分が榊に惚れてもらえる人間でいられたことが誇りに思えた。榊に失望されない臼井宮子になれたことがただ、幸せだった。
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