乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「天使ちゃんでも悪魔ちゃんでも、会えるのが待ち遠しいわ」

眸がやんわり弧を描く。

「オリエちゃんやサエちゃんもいるし、先輩ママがたくさんいて心強いわね」

そりゃもう自分の体なのに分かんないことだらけ。頼りまくって助けてもらう大前提。でも、丸っきり不安がないって言ったら嘘。

恒例のクリスマス会もリタイアだろうし、当分会えないからユキちゃんを充電したい、って真にはワガママ言って連れてきてもらったけど。よく効く魔法をかけてもらいにきたの、ほんとはね。

「世の中のお母さんてすごいよねぇ?あたし、ちゃんと産めるかなぁ。・・・って、言ってる場合じゃないね、紗江のしっかりを分けてもらわなきゃー」

本音を、笑って冗談めかした。

「自覚なさすぎじゃね?フツウの女と比べたら宮子は鉄人だよ。紗江は言っとくけど別格だから」

「・・・俺が知ってるお前に、できねぇことがあるかよ」

ダンナ様の掌に頭をぽんぽんされながら、素っ気ない榊の声が追ってくる。背中を押される。

あったかいのが染みて、鼻の奥まで染みて、目にも染みたから、カップに口つけて湯気で誤魔化そうとした。

「ただ喜んであげればいいんだよ」

静かな、ふいの男口調。ユキちゃんはタンブラーを拭く手を止めないまま。

「授かったのは、宮子お嬢があんなに傷ついて闘って、どうしてもあきらめられなかった男の子供なんだから」
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