乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
はやる気持ちをこらえながら診察を受け、先生の口から結果を知らされたとき、付き添ってくれたママと抱き合って泣いた。

駐車場の車の中で落ち着かなかったはずの真も、戻ったあたしをきつく抱きすくめ肩を震わせてた。

自然に妊娠する可能性は1%ぐらいなのを覚悟してたから。こんな奇跡が起きるなんて想像もしてなかった。ウレシイを突き抜けて一周回って、間違いなくここに赤ちゃんがいるんだって思ったら、ただ愛しくて愛しくて。

おじいちゃんは『よくやった!』ってオイオイ泣くし、気丈なおばあちゃんでさえ『大事になさい』って、孫の前で涙を見せたのは初めてだった。

『そうか』ってひと言だけだったお父さんのことを、あとで哲っちゃんがこっそり教えてくれた。お母さんの仏壇の前で男泣きしてた・・・って。

紗江には母子手帳をもらえてから報告しようと思ったけど。やっぱり黙ってられなくて電話したら、結婚式と負けないくらい号泣。

どれほど待ち望まれて愛されてるか、十月十日、この子に聴かせてあげたい。

あたし達をどんなに幸せにしてくれたか教えてあげたい。

「お腹から出てきたら絶対また、全員もれなく大泣きだねぇ」

「予定日はいつ?」

「いま六周目で、来年の七月の終わりかな。あたしの誕生日が六月で真が八月じゃない?パパとママの間なんて、可愛いすぎるでしょ~」
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