乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
そっか。一番信頼してる護衛係に頼んでないわけなかった。キクチくんを呼び戻してあたしを一人きりにしたら、榊は絶対ほっとけない。わざときっかけを仕組んだんでしょ?

連絡ひとつ寄越さない不器用男のグチをこぼしまくってたから、ユキちゃんが真にお節介を頼んだのかな。『たりない』を素直に言えないあたしが不憫で。

「まだ帰れないって。またフラれちゃったぁ」

泣きかけを誤魔化すように、明るく冗談めかした。暗がりでよかった。

「口説き甲斐のあるヤツだねぇ?」

三十歳すぎても変わらずのアイドル顔が不敵に。

「けど、オレの女を何度も泣かすのは許さねーよ」

夜空で大輪の花火が爆ぜれば、はしゃぐ凛太朗と無邪気な笑い顔をのぞかせた。

ほんとは真だってずっと三人三脚で、この極道(みち)を貫きたかったの。榊ひとりに背負わせるような真似なんか、したくなかったの。

本気出せば止められたのに、止めなかった。

あんたの意地は優しさで出来てるから。あんたが手にした銃は、絆って名前のハガネで出来てるから。あんたの気持ちを殺したくなかったの、真は。

あのね。

あたしの未来予想図はね。この子達のどんな思い出にも、もれなくあんたが登場してた。あたしの幸せなんて、それくらいでお釣りがくるんだからね。わからずや。

「・・・榊のばか」

呼んだ名前は轟きに掻き消えた。

『宮子らしくないわよ!』

一瞬、紗江が仁王立ちしてる幻が浮かんだ。

『遊佐クンを取り返した根性は、どこに置いてきたわけ?!』

背中をバンバン叩かれた。おかげで目から鱗が落ちた。

寝ぼけてた。何回フラれたって、諦めるのを諦めないのが、あたしだったよねぇ。

覚悟しといてよ。胸の中で吠えて小っちゃく笑った。届くまで愛ごとつらぬく主義なんだから。

天を仰ぐ。

ひときわ大っきい牡丹花火が、紅く、咲いた。





FIN



< 184 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop