乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
3-3
『これからも宮子に隠しゴトするけど、死んでもオマエを裏切らないよ』

亞莉栖の帰り道、真が言った。

隠すたび荷物を増やしても、重くて腕が千切れそうになっても、どこまでも甘い顔で笑うんだろう。あたしの前では。

『そんなに欲張んないでよ。・・・ずるいよ』

『オレはキレイなものしか宮子にやんないよ』

女を道連れにするのも愛。しないのも愛。あたしは、して欲しかった。本音でせがんだけど真は笑っただけだった。

胸の真ん中で歯車が軋んでるみたいな音が消えないまま、榊が闇医者から戻った次の晩。高津さんが名指しした、件のルナティックにあたし達はいた。

使ったことがない路線の駅の北口から伸びた繁華街は、エスニックやアジアンのカラフルな電飾看板も目立ち、小雨がぱらつく中、仕事帰りらしいお客が行き交う。

車に西沢さんを残し、榊、真、あたし、甲斐さん、角さんの五人でバーが集まった、とある飲食ビルへ向かった。甲斐さんと角さんを同行させてくれたのはもちろん仁兄だ。

エレベーター脇に掲げられた案内版を見た限り、ワンフロアに1店舗、最上階まで横文字かカタカナの店名が並んでた。

角さんが5階のボタンを押し、停まることなく到着すれば、壁も床もダークグレイ一色。アンティークなブラケットライトの下に立つと、黒い扉が自動でスライドした。

「君は来ると思った。ようこそ宮子お嬢さん」
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