ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「車で話した時は渋々って顔じゃなかったけどな」
「なんですかそれ……私がいったいどんな顔をしてたって言うんですか?」
彼の甘い雰囲気に流された感は否定できないが、喜んで首を縦に振ったわけではなかったはず。
瀬戸山はコーヒーに口をつけた後、思い返すように視線を宙に投げる。
「簡単に言えば……困った顔、だったな。いつもは気が強そうな眉が下がって、揺れる瞳は不安そうで」
「そ、それじゃ私の言い分の方が正しいじゃないですか」
ほら見なさい。強引に誘われて断り切れず、困り果てた末に仕方なく彼についてきてしまっただけなのだ。
そりゃ、頼りない顔にもなるでしょうよ。
「俺にはそうは見えなかった」
「えっ?」
カップを置いた瀬戸山がスッと席を立つ。それから私のそばまで来ると、まるで私を閉じ込めるかのように椅子の背とテーブルに手をついた。
逃げ場のなくなった体勢にドキッと心臓が飛び跳ねる。
私を見下ろす彼の目は甘い熱を孕んでいた。