ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 九条百貨店社長のひとり娘。今年の春に大学を卒業したばかりの二十二歳。

 以前統が『子どもとしか思えない』と話していたことも合わせて、私はてっきりきゃぴきゃぴとした落ち着きのない女性を想像していた。

 しかし、応接室で向き合った彼女は意外にも落ち着いた雰囲気の女性だった。背中まであるロングヘアや大きな瞳は色素が薄く、どこか儚げな印象を持つ。

「美吉社長でしたよね。お約束もせずいきなりお訪ねしてしまってすみません」

 美しい所作でお辞儀をした彼女に恐縮する。

「いえ、今、ちょうど時間が空いておりましたので……それで、私にどういったご用件でしょう?」

 警戒心をほどき、蘭子さんに笑いかける。彼女もまたにっこりと微笑むと、次の瞬間その笑みをスッと消して、能面のような顔になった。

「いい加減、統さんのことを返してくださいませんか? 今日はそのお願いに参りました」
「え……っ?」

 返すって……どういうこと? 私たち、今は何のかかわりもないはずなのに。

「彼はいまだに私との結婚に関して首を縦に振りません。全部あなたのせいです」

 蘭子さんの豹変ぶりに背筋が冷たくなる。だけど、彼女に責められる筋合いはない。

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