ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
受話器を手で押さえた左木くんが、こちらを向く。
私に来客であったのだろうか。アポはなかったはずだけど……。
反射的に腰を上げると、左木くんがいつもの淡々とした口調で言った。
「その見積を依頼した新婦の方が、今受付に見えているそうです。苑香さん、どうします?」
蘭子さんが会社に……?
会いたくない、というのが正直な心境だった。しかし、彼女と話してみれば、うちに結婚式の装花を依頼した理由がわかる可能性もある。
さっきは一瞬当てつけかとも思ったけれど、統はそんなくだらないことをする人ではない。
庇うわけじゃないけれど、私がライバルと認める男が、そんな器の小さい人だと思いたくなかった。
「今行くと伝えて。それと会議の続きはごめん、明日以降に変更で」
左木くんと他のふたりにそう伝え、見積書を手に会議室を後にする。
蘭子さん……いったいなにをしにここへ来たの……?
微かな胸のざわめきは、廊下を一歩進むごとに大きくなっていった。