ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「なにかお困りなら、僕がお手伝いしますが」
「いや、ちょっと迷ったもんで道を聞いてただけです。どうも失礼しました~」

 早口で嘘を並べ立てた男性が、逃げるように公園の出入り口へと走っていく。

 ホッと息をつくと、瀬戸山が私の方へ向き直る。その両手にはバラ色スムージーがしっかりとふたりぶん握られていた。

「ありがとうございました、飲み物。それと、今のおじさんの撃退も」
「いや、助けるのが遅くなって悪かった。ちょうど順番が回ってきて、注文も済ませたところで苑香が絡まれているのに気づいて……迷ったんだが、これ、楽しみにしてるかなと」

 飲み物を優先させたことを後悔しているのか、瀬戸山は少しばつが悪そうだ。

 いつも強引で偉そうな彼が、バラの花が浮いたピンク色のスムージーを両手に持ってしゅんとしている姿がちょっとかわいくて、思わず笑みがこぼれる。

「大丈夫ですよ。別に、ナンパされていたとかじゃないんです。マッチングアプリで女性に興味を持ってもらえないから、プロフィールの問題点を指摘してほしいんですって」

 彼の手からスムージーをひとつ受け取って、説明する。

 瀬戸山は軽く眉根を寄せて悩むそぶりをした後、スムージーを持っていたせいでひんやりとした手を伸ばしてきて、私の手をギュッと握った。

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