ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
……でも、この気持ちを認めてしまったらどうなるのかが怖い。
思い切って恋愛に飛び込んだとしても、仕事にかまけているうちにまた相手の心が離れている、なんて悲しい展開はもうたくさんなのだ。
私は美吉ブロッサムがなにより大切だから、仕事を蔑ろにすることは不可能。
たとえ今瀬戸山統に惹かれているとしても、ライバル関係から一線を超えたら自分がつらくなるだけだ。
……冷静になろう。
「別に熱があるわけじゃないので大丈夫です。せっかくなのでこの温室を見て、雨が弱くなったら外に出ましょうか」
「そうだな」
足を進めると同時に、瀬戸山は自然とまた私の手を取ろうとする。けれど私はパッと自分の手を引っ込めて胸に抱いた。
怪訝そうな顔の瀬戸山から目を逸らし、小走りで先を行く。
「こっち、プルメリアが咲いています」
頭上に咲いた可憐なプルメリアの花を見て「綺麗ですね」とひとりごちる。瀬戸山はそんな私を無言で見つめていて、揺れ動く私の心を見透かそうとしているかのよう。
私はそれに気づかないふりをして、ひとり南国の植物にはしゃいでいる演技を続けた。