ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
差し出された手を掴むのをためらっていると、「行くぞ」と言った彼がしっかり私の手を握る。
そのまま彼に手を惹かれ、私たちはバラ園からほど近い温室を目指して走った。
ガラス張りの温室はドーム状で、ブーゲンビリアやハイビスカス、大型のヤシの木など、熱帯地方の植物が展示されている。
あまり人気がないのか、見える範囲に他のお客さんの姿はなかった。
なにげなく温室内を眺めていると、瀬戸山がジャケットを脱いでバサッと私の肩を覆うようにかけた。突然彼の香りに包まれてどぎまぎし、彼に戸惑いの目を向ける。
「着てていい。中までは濡れてないから」
「私なら大丈夫ですから、瀬戸山さんが着てください」
一旦上着を脱いで渡そうとしたものの、すぐに返されてまた肩にかけられてしまう。
「遠慮するな。風邪を引いているくせに」
「えっ?」
私、言いましたっけ? そのこと……。
「そのマスク、キス避けだなんて嘘だろ。それに喉の調子も悪そうだ」
「気づいてたんですか……」
「ああ。きみを帰したくなくて、気づいてないふりをしていた。黙っていて悪かったな。体、つらくないか?」
ポケットからハンカチを取り出した瀬戸山が、私の髪についた水滴をそっと拭う。
優しい仕草に胸が高鳴ってしまう。それに、私を帰したくないと彼が思っていたことにも。
雨に濡れたというのにやけに顔が熱いのは、おそらく風邪のせいでも温室にいるせいでもない。