唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
地面を乱暴に蹴るような足音が近づいてくる。
私は挟まった車の足置き場で、体を震わすことしかできない。
顔だけを横に向け、目をつぶり、人生を諦める覚悟を決めたそのときだった。
私の鼓膜に大好きな声が届いたのは。
「琉乃ちゃん」
息が止まりそうになる。
心臓が張り裂けそうになる。
「大丈夫? ごめんね、怖い思いさせて」
私は固まったまま動けない。
「いま縄を切るから」
手足が自由になっても。
「車のシートに座ろう、ね」
悲しそうに瞳を揺らす王子様が、私だけに微笑んでくれているこの状態でも。
暖かい手のひらで支えられ、なんとか後部座席のシートに座ることはできたけれど。
私の表情は未だこわばったまま。
眼球すら固まったまま。
「本当に良かった、琉乃ちゃんが無事で」
車外の地面に足の裏をつけたまま、唯都様が私を抱きしめた。