唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 「あの……」


 かすれ声に水分が含まれていて、涙をこぼしている自分に遅れて気づいた。

 どうやら私は絶望の波に襲われると、発情が収まってしまうらしい。

 さっきまで困り果てるくらい荒ぶっていた呼吸も高熱も、体がだるい程度までおさまってくれていて、逆に戸惑いを隠せなくて。



 「琉乃ちゃん、振り向かないで」



 私の体のどこにも唯都様の熱を感じ取れなくて、不安があおられる。



 「俺の言うことちゃんと聞いて偉いね」



 ものすごく優しい声なのになぜか切なさも溶けていて。

 なぜ私の首を噛んでくれなかったんですか?

 聞きたくても、喉が震えて言葉にならなくて。



 唯都様は絶対に噛もうとしていた。

 歯が首に当たっていたから間違いない。

 それなのに……



 やっぱり怖くなってしまったんでしょうか。

 結婚式直前、この相手と結婚していいのだろうかと不安になるサムシングブルーみたいなものに襲われたのかもしれない。


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