君しか考えられない――御曹司は熱望した政略妻に最愛を貫く
 診察を終えて帰宅し、三匹をリビングに放してやる。
 落ち着いて見えたネロも実は気疲れしていたのか、狭い隙間に入って毛づくろいをはじめた。
 相変わらずつくしは室内を駆け回り、あずきはソファーに座った私によじ登って甘えてくる。

「この子たちがいると、毎日が賑やかで退屈しないなあ」

 私の口もとを狙ってくるあずきをかわしながら、なにげなくつぶやく。

「そうだな。見ていてあきない」

 苦笑する彼に私もうなずき返した。

 結婚してからの半年間に、絢音屋の経営体制は大きく変わった。
 父は豪華な婚礼衣装にこだわったことで、社員からずいぶんと反感を買っていたようだ。そこへさらに三崎商事に対する言動を明らかにされて、ついに社長不適格だという声が上がりはじめた。

 このままでは三崎商事から切られてしまうと、周囲は会社の行く末に対する不安を募らせていく。
 社長の交代を訴える声は次第に大きくなり、最終的に父は追い詰められるようにして退任した。

 晴臣さんが予想していた通り、その後新社長には孝弘さんが就任した。
 もちろん、三崎商事との取引は今後も継続される。
 晴臣さんと孝弘さんとの関係はかなりよいようで、ふたりは新たな事業を展開する話もしているそうだ。これまでは違った形で協力し合えそうで、私としても一安心している。

 あずきの鳴き声に、考え事から引き戻される。
 少し前に私の膝を下りた彼女は、それからつくしを追いかけていたようだ。逃げたつくしはキャットタワーの一番上まで登ってしまい、あずきは戻ってきてほしいと一生懸命訴える。
 こんな様子は頻繁に見かけているが、それでもあきずにいつまでも眺めていられる。
 
「みんな一緒に暮らせて、本当によかった。晴臣さんのおかげで、毎日が楽しくて仕方がないの」

 そうこぼした私の肩を、晴臣さんが抱き寄せる。
 それから彼は、私の耳もとでささやいた。
 
「ここに俺たちの子どもが加わったら、ますます賑やかで楽しくなると思わないか?」

 途端に顔が熱くなり、視線が泳ぐ。

「ま、間違いない、です」

 彼が私との子どもを求めてくれることがうれしくてたまらない。

 恥ずかしさに彼の顔を見られないまま勢いよく抱き着くと、晴臣さんも力強く抱きしめ返してくれた。



END
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