君しか考えられない――御曹司は熱望した政略妻に最愛を貫く
「三崎晴臣です。亜子さんと会うのは、十日ぶりくらいかな」
彼が不快に感じている様子は見られずほっとする。
「なんだ、亜子。晴臣君と知り合いだったのか?」
彼との関係を隠していたつもりはないけれど、父に明かす必要性を感じていなかったし話す機会もなかった。
そんな私の態度が気に食わなかったのか、父が明らかな苛立ちを見せてくる。
「え、ええ」
遠慮がちにそっと顔を向けると、目が合った三崎さんは穏やかな表情で小さくうなずいた。
「まあ、それならちょうどいい。早速だが、亜子には晴臣君と婚約してもらう」
「婚約、ですか?」
唐突な話に理解が追いつかず、彼と父の間で視線を往復させる。
「晴臣君と亜子が結婚すれば、うちと三崎商事とのつながりが絶対的なものになる」
それがよほどうれしいのか、困惑する私にかまわず父は手もみをしながら笑顔で話す。
「わかっているな、亜子」
でもチラリと私に向けられた視線は、打って変わって鋭いものだった。
つまり、彼との婚約は命令なのだ。酒々井家に世話になっている身で、断るなど到底許されるわけがないと私も心得ている。
「……承知しました」
三崎さんがどういうつもりなのか、私にはわからない。
ただ彼の立場を考えたら、断ることも可能だったはず。
「ああ、そうだ亜子。この話は、しばらく内密に進めたい。史佳や都にも隠しておくように」
「はい」
史佳は私のひとつ下の異母妹で、都は彼女の母親だ。
ふたりにこの話を明かさない理由はわからないが、逆らうつもりはもちろんない。
彼が不快に感じている様子は見られずほっとする。
「なんだ、亜子。晴臣君と知り合いだったのか?」
彼との関係を隠していたつもりはないけれど、父に明かす必要性を感じていなかったし話す機会もなかった。
そんな私の態度が気に食わなかったのか、父が明らかな苛立ちを見せてくる。
「え、ええ」
遠慮がちにそっと顔を向けると、目が合った三崎さんは穏やかな表情で小さくうなずいた。
「まあ、それならちょうどいい。早速だが、亜子には晴臣君と婚約してもらう」
「婚約、ですか?」
唐突な話に理解が追いつかず、彼と父の間で視線を往復させる。
「晴臣君と亜子が結婚すれば、うちと三崎商事とのつながりが絶対的なものになる」
それがよほどうれしいのか、困惑する私にかまわず父は手もみをしながら笑顔で話す。
「わかっているな、亜子」
でもチラリと私に向けられた視線は、打って変わって鋭いものだった。
つまり、彼との婚約は命令なのだ。酒々井家に世話になっている身で、断るなど到底許されるわけがないと私も心得ている。
「……承知しました」
三崎さんがどういうつもりなのか、私にはわからない。
ただ彼の立場を考えたら、断ることも可能だったはず。
「ああ、そうだ亜子。この話は、しばらく内密に進めたい。史佳や都にも隠しておくように」
「はい」
史佳は私のひとつ下の異母妹で、都は彼女の母親だ。
ふたりにこの話を明かさない理由はわからないが、逆らうつもりはもちろんない。