玉響の花雫    壱
今のって‥‥フランス語?


私に気づくと電話を切ってしまった筒井さんだけど、最後の方だけ聞くつもりはなかったのに
聞こえてしまった‥‥‥。


「お、お待たせしてすみません。」

『ああ、大丈夫だ。仕事の電話をしてたから気にするな。』


やっぱりお仕事のお電話だったんだ‥‥

いつも通りわたしのあたまを優しく撫でる手に笑顔を向けつつも、少しだけ不安になっていた。


答えが出ないからもう少し時間が欲しい‥‥‥って言ってた‥。

私には仕事のことは話さないだろうし、聞かなかったことにした方がいいと思ったので、なるべく顔に出ないようにしなきゃ‥



ガチャ


『どうぞ。』

「お邪魔します。」


もう何度目になるかわからないけど、相変わらずドアを開けてくれてくれる優しさに笑顔を向けると、荷物を寝室に置いてからリビングに向かった



「こんばんは。」

『井崎さんおかえり。』
『霞ちゃんお疲れー』


既にお酒の席がスタートしているのか、リビングでくつろぐ2人に挨拶をいつものようにする。


蓮見さんはここの鍵は持ってないけど、亮さんはたまにご飯を作ってくれるから合鍵を渡しているらしい。


『シャワーしてくるから、適当に相手頼む。疲れたら無視してていいから。』


無視なんて出来ないと思いながらも、お湯を沸かしていると、亮さんがキッチンにやって来ておつまみを作り始めた。


『なにかあった?』

「えっ!?
 なにかって筒井さんのことですか?」


チーズと茹でたそら豆を生ハムで巻いてパパッとオツマミを作っていて勉強にとてもなる。


『うん、なんか浮かない表情してるからさ。』


「どうなんですかね‥‥。悩みがあるなら聞きたいんですけど、お仕事のことだと聞けないですし、聞いても私には何もできないとは思います。」


筒井さんはいつも私が困っていたり悩んでいると助けてくれるし、解決してくれる。

わたしはまだ自分のことでいっぱいいっぱいで、筒井さんの抱える何かに気付いてあげることも出来ていない‥。


『そばに居てくれればいいよ。』

えっ?

『前にも言ったけど、今の滉一が穏やかでいられるのは井崎さんがいるからだと思うよ?何も出来なくても、案外隣にいるだけで存在自体が役に立ててることもあるからさ?』


隣にいることだけでいいならこれからもずっとそばにいたいけど、本当にそれだけでいいのかな‥‥
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