玉響の花雫    壱
本当は大人っぽくなりたいからヒールでも履いてイリスさんのように隣に並びたいけれど、無理をしても似合わないうちはまだこれでいい‥‥


今日のお客様は‥‥
〇〇百貨店の営業の方が見えるんだ。


ここの地下によく自社のチョコレートを買いに行くから勝手ながら親しみがとてもある。


あとは制作室や企画開発の方など、今日は来客が多そうだから気を抜かずに頑張らないとな‥‥


案の定業務が始まれば忙しく、菖蒲とのランチの時間もずれて会えずに終わってしまい、今日は佐藤さんに先に休憩に入って頂いた



とりあえず今から3時間は来客予定がないから、今のうちに出来なかったスケジュール管理の入力とデータを打ち込もうかな。


『あの‥すいません。』


「えっ?あ‥‥〇〇百貨店の辻様ですよね?どうされましたか?」


30分前に営業の打ち合わせを終えて帰られた辻様が何故かもう一度尋ねて来たので慌てて対応をさせて頂いた。


何かお忘れ物や、届け忘れなどもあるため、帰られた後に戻られるケースも何度かあるのだ。



『忙しいところ申し訳ないのですが、人事の筒井にこれを渡して頂けないでしょうか?』


えっ?筒井さんに?

大きめの茶封筒は受け取ると少し重くて、書類とかではなさそうだ


「かしこまりました。確かにお預かり致します。お手数ですが、こちらの記録にサインだけ頂けますか?」


辻さんに時間と筒井さん宛に受付にて茶封筒を預けたというサインをしていただく。


預かったとか、預けてないとか行き違いがあるといけないので、必ずこうしたことは面倒でも
していただくことにしているのだ。


『急ぎじゃないけど、なるべく早く見ては貰いたいから頼んでしまってすみませんがお願いします。』


「承知いたしました。」


最後に丁寧に姿勢を正してお辞儀をすると、辻さんは笑顔で帰って行った。


営業の方なのになんで筒井さん?もしかして‥元々営業だったって言ってたから辻様とお知り合いなのかもしれないな。

忙しいとは思うけど、急ぎと言ってみえたし、人事に電話だけ一応かけてみよう‥


プルルルル プルルルル


『(はい、人事課筒井です)』


ドキッ!!


まさか筒井さんが出るとは思わず、ビックリして受話器を落としそうになりつつも、滅多にないことだけにそれだけで嬉しくなる。


「筒井さん、お疲れ様です。一階受付の井崎です。今お時間大丈夫でしょうか?」


『(ああ、どうかした?)』


「〇〇百貨店の辻様から筒井さんに渡して欲しいと封筒を預かりました。お届けに伺いますが何時ごろが」

『(今から取りに行くよ。ちょうど休憩に出るとこなので。)』

「はい。では、お待ちしてます。」
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