《番外編》愛し愛され愛を知る。
「マーマー!」

 車へ戻ると、買って貰ったクマのぬいぐるみを大切そうに持ちながら真彩に抱きつく悠真。

「ママ、くまさん!」
「買って貰ったの? 良かったねぇ」
「理仁さん、姉さん、おかえりなさいっス! 荷物はこれだけッスか?」
「細かい物は持って来たが、大きな物は届けるよう手配した。玩具の方はどうだ?」
「はい、こちらも車に入りそうな物は運び入れましたが大きな物は配送してもらうよう手配しておきました」
「そうか」

 悠真が買って貰った物を真彩に報告している側で俺は朔や翔と状況を報告し合う。

「あの、悠真が沢山買って貰ったようで、本当にすみません。悠真、理仁さんに『ありがとうございます』ってお礼を言って?」

 悠真から沢山の玩具を買って貰った事を聞いたらしい真彩は申し訳なさそうに謝ると、俺にお礼の言葉を言うよう悠真に話をする。

 相変わらず俺に慣れていない悠真はチラチラこちらを見つつも、「……ありがと……ごじゃます……」と言い慣れない言葉でたどたどしいお礼だったが、一生懸命言葉にする悠真を可愛いと思い、不覚にも自然と口元が緩んでいた。

 そんな状況を照れ臭く感じた俺は話を逸らす為、昼間の出来事を蒸し返して皆の視線を朔に持って行かせる。

「これで、朔の物を取られなくて済みそうだな」
「ちょっ! 理仁さん! あの事は蒸し返さないで下さいよぉ……」
「事実を述べただけだ」
「朔太郎、見られて困る物は全て捨てろ。それが一番だ」
「いやいや兄貴、あれは男のバイブルだから! 捨てるとか無理だし!」
「ばいふるって、なあに?」
「悠真は知らなくていいの! あーほら、絵本読んでやるから車乗るぞ」
「わーい!」

 話を終えて車に乗る間際、俺はどうしても気掛かりだった事を解消する為にある場所へ電話を掛ける。

 そして、助手席に座って運転席に座る翔に行きたいところがあると小声で告げると、それを聞いた翔は黙って頷き車を走らせた。
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