俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
(は?……どういうこと?)
新聞社の取材を終えた瑛弦は食糧品を買い溜めするためにロンドンの大型ショッピングモールに来ていた。
すると、自分とのデートの誘いを断った羽禾が基と楽しそうに買い物デートしているではないか。
瑛弦はもちろんのこと羽禾も仕事が多忙で、デートらしいデートは殆どできない。
GPが開催される現地で僅かな時間を見つけて逢瀬を重ね、ベース基地に戻って来た時に瑛弦の家で過ごすくらい。
これまでちゃんとした交際をしたことがないから、何が正解なのか分からない瑛弦は、羽禾と過ごす時間にもどかしさを感じていた。
「もしもし?」
「今、どこ?」
「ん?どこって……ロンドンに来てるけど」
「この間言ってた車、今日見に付き合って欲しいんだけど」
「……あーごめん、今日は無理」
「何で?」
「何でって、俺にも色々用事があんだよ」
「だから、何の用事なんだよ」
「別に何でもいいだろ?」
「……あっそ、じゃあ、いいや」
「ごめんな~。今度時間つくって付き合ってやるから」
「いい。もーいい。女とヨロシクやってろっ」
「あ、おいっ…」
瑛弦は探りを入れるために基に電話したのだ。
はっきりとは言わなかったが、羽禾といることを隠した。
瑛弦が今乗っている愛車は、『Blitz』の土台会社であるドイツの高級自動車メーカーの車。
2人乗りのスポーツカーなのだが、広告車とも言えるようなド派手なボディーカラー(ゴールドに近い黄色/Blitzのチームカラー)。
だから、羽禾を乗せてドライブするのも難しく、瑛弦は基が使用しているような黒いSUVを購入しようとしていた。