俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
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「お前、今日一日何してたの?」
「え?……午前中は資料の整理をして、午後は知り合いと買い物に出かけてましたけど…」
「フゥ~ン、知り合い、ね」

 日が暮れると、食材を手にした羽禾が瑛弦の家へとやって来た。

 日中のデート現場を目撃している瑛弦は、キッチンで手際よく夕食の用意をする羽禾を見据える。

「その知り合いが送り迎えしてくれたのか?」
「……あ、はい」
「買い物したいなら俺に言えよ」
「へ?」
「今日一日、俺、完全オフだったのに」
「……ごめんなさい」

 お互いに時間が取れる時なんて滅多にない。
 その貴重な日を、自分以外の男とデートしているのを目にして、瑛弦の心は穏やかではない。

 今までこんな気持ちになったことがなくて、どう振る舞ったらいいのかすら分からずにいた。

「なぁ」
「……はい?」
「今日泊ってくだろ?」
「明日の昼の便で帰国する予定なんですけど…」
「荷物はもう纏めてあるのか?」
「纏めるほど荷物はなくて、お土産くらいなんです、いつも。実家に帰れば着替えや日用品はあるので」
「じゃあ、泊ってけよ。空港までは俺が送ってやるから」
「……はい」

 スープを作っている羽禾を羽交い絞めするみたいに腕の中に閉じ込めた。

「お前、警戒心無さすぎ」
「っ……、それは相手が瑛弦さんだから…」
「どうだか」
「ホントですよ?他の男性(ひと)に抱きつかせたりしませんよ」
「……基からしょっちゅうハグされてんじゃん」
「あ……あれは不可抗力です」

 ショッピングモールで、笑顔で羽禾の頭にキャップを被せる基の顔が瑛弦の脳裏を過った。
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