俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

「これを見て貰えるかな?」

 先ほど検査したMRIの画像がパソコンに映し出されているようだ。

「これが笹森さんの脳のMRIの画像になります。この白いものが分かるかな?」
「……」
「髄膜腫と言って、脳を覆っている髄膜に腫瘍があります。殆どは良性の腫瘍で、脳や神経を圧迫することで症状が出てきます」
「……」
「眩暈がしたり、手先が痺れたり、視野が欠けたり。後は食欲が落ちたり、倦怠感が出たり、頭痛がするのもこれが原因です」
「っっ……」

 医師が説明してくれる全てのことに思い当たる。
 健康診断の時にも、問診でしつこいくらいに聞かれた質問だ。

 時差ボケ、過労、ストレス過多だと思っていたことは全て、病気のせいだっただなんて。

「あの、先生」
「はい」
「その……手術が、…必要ですよね?」
「3センチ以内なら放射線治療で経過観察することもあるんですが…」
「……」
「笹森さんの場合は、既に3センチを超えていてね……。できれば、早くに手術を受けて貰いたい」
「………っっ……んっ…」
「大丈夫ですよ。ゆっくり呼吸して下さいね」

 看護師さんがティッシュを手渡してくれて、優しく背中を摩ってくれる。

 言葉にならない嗚咽が漏れ出し、走馬灯のように体調不良だったことが蘇る。
 何故、大したことないと過信したのだろう。

 体はこれでもかというくらい、何度も知らせてくれていたのに。


 私は前世で、よほど大罪を犯したのだろうか。
でなければ、こんなにも辛いことが数珠つなぎのように起こるはずがない。
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