俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
父親に心配をかけてしまう。
職場にも報告しなければ……。
彼に、何て言えばいいのだろうか。
とりあえず、芙実に相談しよう。
すべきことは決まってるけれど、まずは気持ちの整理をしたい。
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「ごめん、急な残業が入って」
「ううん、大丈夫だよ」
「お腹空いたね。何か買って帰ろう」
「……うん」
芙実の仕事が終わるのを会社近くのカフェで待っていた羽禾。
脳に関する書籍を書店で買い、芙実を待っている間にそれを読んでいた。
「ものもらい?目が赤い気がするけど」
「……今日はコンタクトが合わないみたい」
泣き腫らした目がまだ赤いらしい。
もう5時間以上も経っているのに。
デパ地下でお惣菜を購入して、芙実のマンションへと向かった。
「今日はお月見日和だよ♪テラスで飲もうか!」
「……そうだね」
こんな風に芙実と月見酒をするのも最後かもしれない。
他愛ない日常が徐々に削られてゆく感覚に、羽禾の心は容赦なく抉られる。
缶ビールで乾杯し、芙実の取り皿に筑前煮を取り分けていると。
「彼氏と喧嘩でもしたの?」
「え?」
「なんか、表情が暗いよ」
「……」
小学校の頃からの付き合いだから、何でもお見通しなのだろう。
羽禾は、グビっと一口ビールを喉に流し込み、深呼吸した。
「会社の健康診断で引っかかって、今日精密検査して来たの」
「精密検査?……眩暈とか頭痛とかのやつ?」
「……うん」