俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
①コーナーを回るマシンを見守る中、ポールが3番手のライアンをオーバーテイクし2位に浮上。
羽禾はインカムから送られてくる実況を聞きながら、ピット裏のあちこちにあるモニターを見守っていた。
『笹森、観客席からのコース画送ってくれ』
『了解です』
プロデューサーからの指示を受け、倉林カメラマンに指示を出す。
各国のメディアが慌ただしくピット裏を行き来する中、羽禾は最後の仕事を噛みしめていた。
*
「We are currently under threat from Gregg behind.」(瑛弦、猛追されてるぞ。すぐ後ろにグレッグが来てる。脅威だ)
「I know.」(分かってるって)
「We need to get past Rayan.」(ライアンを抜かないと)
「I know what I'm doing so just be quiet!」(分かってるって!グダグダうるせぇなっ、口閉じてろ!)
ドライバーズチャンピオンがかかっているグレッグはスタートと同時にガン攻め体勢。
元々アグレッシブなドライビングテクニックのドライバーだが、今日はいつも以上に荒れ狂ってるようだ。
「Oh my God! Crazy! He’s overtaken me outside the track!」(イカれてる!コース外からオーバーテイクされた!)
「OK Eito,head down.」(瑛弦、集中しよう)
縁石外にタイヤを落とすくらいならまだしも、完全にコースをショートカットする状態で、グレッグがペナルティエリアから追い抜いて来たのだ。