俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
「He hit me now on the rear. He hit me!」(リアをぶつけられた!奴が当てやがった!)
「What?」(は?)
「This is not possible.」(マジでありえねぇ)
「Head down.」(落ち着け)
「I should have known really, that he’s mental.」(奴、ガチで気狂ってるって)
瑛弦にアンダーカットされたことでキレたのか。
グレッグはあからさまにコーナーでオーバーテイクしようとフロントを瑛弦のリアに当てて来たのだ。
接触すれば双方に被害が出る。
運が悪ければクラッシュするし、命の危険にさらされる。
「Is the machine OK?」(マシンはいけそうか?)
「Seems okay.」(大丈夫そう)
ステアリングの表示にエラーが出てないか、確認した瑛弦。
マシンの至る所にセンサーが搭載されていて、僅かなトラブルでも画面に表示される仕様だ。
「I wanna hit him when I see him!」(奴見かけたら、ぶん殴ってやる!)
「For sure. If it makes you feel better.」(やっちまえ、お前の気が済むなら)
レースを冷静に進ませるための声掛け。
それでなくてもドライバーは限界と闘っているため、声掛け1つでレースが左右される。
基は瑛弦の性格を熟知しているゆえ、声掛け1つにも思いやりを込める。
F1の無線での会話は英語と規定されていて、全て公開されている。
妨害行為を指示していないかなど、全てスチュワード(審査員)の厳しいチェックが入っているのだ。