俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「20XX年 F1 世界選手権 第20戦 アブダビGP 最終レース決勝のお時間がやって参りました。最終戦も解説はお馴染み 川端 勇悟さん。実況は私、西野 透です。どうぞ宜しくお願いします」
「お願いしま~す」

 西野の滑らかな冒頭挨拶がきまり、フォーメンションラップで1周するマシンがテレビ画面に映し出された。

「今年のF1は、過去最高の盛り上がりですよね、川端さん!」
「そうですよ!我ら日本の絶対的エース、司波がポールポジションで挑む最終決戦ですよ~」
「昨年は惜しくもドライバーズ2位でしたが、現在1位とのポイント差は3P。十分に1位を狙えますよ」

 1位のファンスは予選9位。
 決勝レース上位10人がポイントを獲得するため、リタイアでもしない限り、確実に表彰台には上がれる。

「Beware the Grid.」(グリッド位置に気をつけろ)
「I know.」(分かってるって)

 F1のマシンに乗っていると、コックピットからはスターティンググリッドの位置(白線)がよく分からない。
 何千回とスターティングする練習を繰り返し、感覚で覚えるもの。

 スターティンググリッドの位置を少しでもオーバーすると、ペナルティが課せられる。
ポールポジションを獲得しても、スタートする前から出鼻をくじかれることになるのだ。
ある意味、ペナルティを誘うためのフォーメーションラップとも言える。

「OK. Perfect.」(よし、決まった)

 ピタリと白線の上で止まったマシン。
 基は画面越しにガッツポーズを決めた。

< 166 / 180 >

この作品をシェア

pagetop