俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
「P1 Eito, good job!」(瑛弦、1位だ!でかした!)
「Yeah, Of course.」(当然だっつーの)
他のドライバー達が次々とタイムを更新していくのをじっと見守り、制限時間ギリギリまで粘った瑛弦。
サーキットは、周回が多ければ多いほど路面上の小石がなくなり、グリップ(タイヤの設置具合)がよくなる。
だからトライ可能な時間を見極め、最後の最後に最高のタイムを叩き出したのだ。
予選を1位で通過した瑛弦。
羽禾が願い続けた『ポールポジション』まであと一歩。
羽禾が願い続けた『ポールポジション』は予選のP1ではなく、決勝レースのP1のこと。
つまり、ドライバーズチャンピオンを意味している。
(F1では、ドライバーの順位をポジションの『P』で表す)
ピットに戻って来た瑛弦はマシンから降りて跪き、自身の足首に手を当てた。
羽禾から誕生日プレゼントに貰ったアンクレットをしているからだ。
レーシングスーツを着ているから誰の目にもそれが見えないが、基はその行為が、羽禾に対する感謝と誓いだと分かっている。
「瑛弦、いよいよ明日だな」
「おぅ」
立ち上がった瑛弦に基は声をかけた。
シーズンオフの間も1日にも休むことなくトレーニングに明け暮れた瑛弦。
羽禾と知り合う前の瑛弦なら酒と女を繰り返していたのに、すっかり毒気が抜けてしまった。
けれどその顔は、今までで一番熱く燃えている。
「飯でも食いに行くか?」
「いや、いい。明日に備えるよ」
「……ゆっくり休めよ」