闇夜の星
けどお礼くらいはしないとね。あたしの母はそういう礼儀にうるさかったし、あたし自身このまま放置するのは間違ってる気がする。


「助かった
なにかお礼くらいするけど食べたいものとかある? 」


「え、そんな気遣いしてくれんの?」


1回ぶん殴ろうかと思ったけどさすがに今日はやめとくことにしよう。次言ったら殴ると心の中で密かに決めた。


「いいってたまたまだし」


拒否られると思い浮かぶものもないからお礼は出来ないよな·····。次会うことは無いだろうし、なんか借りがあるまんまだとモヤモヤする。


「どうしてもっていうんなら1つお願い聞いてくれない?」

「別にいいけど」


それでチャラになるならと思って即答した。これがあたしの人生を変える分岐点になるとも知らずに。


「名前教えて」


そんなことかと思ってしまった。お金もかからないし、名前教えるだけなら何も困らない。


「葉月 冬花(はづき ふゆか)」


「可愛いじゃん」


「さよなら」


あたしはそのまま走って次のバイトへ行った。なによ可愛いって。しかも名前なんて教えたところでメリットもないだろうに。



「····今日から来なくていいってどういうことですか?」

「言葉通りだって
うちはパートさんで成り立ってるのにどんな口の利き方したら怒って辞めるなんて言い出すわけ?あの人が辞めるなら他の人も辞めるって言うし·····、だったら一人辞めさせて終わりがいちばん簡単でしょ」


ひとつ思い当たるのは貯金を全て取られた日のことだった。


青春よりもお金が必要って言っただけじゃん。あたしの事情を知らないで勝手に被害者ぶってなんなの。


店長も店長だ。たかがパートの1人に苦情を言われてあっさりバイトを辞めさせるって。ほんと、世の中腐ってる。


「もう限界·····」

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